製造業において、デジタルトランスフォーメーション(DX)は避けて通れない課題となっています。今回は、川崎重工業株式会社が導入した「社内PaaS」について、その背景、取組内容、成果、そして今後の課題を解説します。
DX促進にお悩みの方は是非参考にしてみてください。
参考:製造業DX取組事例集|経済産業省
背景と課題
川崎重工業は、各カンパニーごとに個別に最適化された製品ライフサイクル管理(PLM)システムを導入していました。しかし、複数のシステムを併用することでグループ全体での連携が難しく、外部ベンダーへの依存度が高まり、新市場開拓や新製品開発に必要なIT開発が遅れていました。
ビジネスの進展を阻害する結果となっていたため、全体最適化を図るためにコーポレートIT部門が主体となって全社共通のシステムを導入することが決定されました。
取組内容
川崎重工業は、コーポレートIT部門が運用を請け負い、ユーザー単位で利用料を配賦する全社PLM(製品ライフサイクル管理)プラットフォーム「社内PaaS(Platform as a Service)」を展開しました。
このシステムは、小規模から段階的に導入され、既存システムの老朽化に伴うリプレースを順次進める形で展開されました。これにより、各カンパニーの多様なカスタマイズニーズを迅速に満たすことが可能となりました。
システム選定においては、以下の点が重視されました。
- 複合企業特有の多様な業務に対応できること
- 製品ライフサイクルの長さに対応した使用寿命
- 自社内でのシステム追加修正が可能であること
成果
全社共通のPLM基盤を導入したことで、横展開が容易になり、設計部門の部品手配やカンパニーIT部門のベンダー管理などの付帯作業が減少しました。その結果、各部門は付加価値向上業務に注力できるようになりました。
さらに、3DCADデータをPLM上で管理する際には、カンパニーごとにPLMシステムを構築する場合に比べて約80%のコスト削減を実現しました。
今後の課題
全社PLMの導入を契機に、既存業務プロセスの見直しと整流化を進め、スマイルカーブの両端に経営資源を移行することが目指されています。また、マーケティングやアフターサービスなど市場との接点を持つ部署と設計部門の情報連携を促進することで、市場要求にマッチした製品を効率よく作る仕組みを整えることが課題です。
さらに、AI開発に強いパートナーとの連携やベンチャー投資を視野に入れることで、オープンイノベーションを進めることも重要な課題として挙げられています。
まとめ
川崎重工業の「社内PaaS」の事例は、製造業におけるDX推進の一つの成功モデルです。これらの取り組みを参考にし、自社のDX推進に役立てることが求められます。IT基盤の統一と効率化、そして市場要求に応じた迅速な対応が、今後の競争力を左右する鍵となるでしょう。
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