2024年の設備投資状況を解説｜工作機械業界の今後は！

2024年9月18日

2024年は、国内外で企業の設備投資が高い伸びを見せており、特に工作機械業界は注目されています。自動車産業や半導体関連事業が設備投資をけん引している一方で、デジタル化や脱炭素、さらには自動化による生産効率の向上が業界全体のトレンドとなっています。本記事では、2024年の設備投資状況を概観し、工作機械業界の今後について詳しく解説します。

参考：全国設備投資計画調査（2024年6月調査）｜調査研究レポート｜日本政策投資銀行（DBJ）

2024年の設備投資全体の傾向

2024年度の設備投資は、製造業と非製造業の両方で大幅な増加が見込まれています。特に製造業では前年比24.7％、非製造業でも20.0％増加と、全産業での成長が目立ちます。この背景には、電動化や半導体製造関連の設備増強が挙げられます。自動車業界ではEV（電気自動車）の普及に伴う設備投資が拡大しており、半導体業界では需要拡大に対応するための生産ライン増強が急ピッチで進行しています。

工作機械業界における設備投資の現状

工作機械業界も2024年度の設備投資において大きな変化を迎えています。特に、自動車や半導体関連の製造業が、これまで以上に工作機械への需要を高めており、各企業は生産設備の効率化と増強を目指して積極的に投資を行っています。これに伴い、工作機械業界も自動化やデジタル技術の導入が進み、競争力を強化するための取り組みが加速しています。

自動車業界のEVシフト
自動車業界では、ガソリン車からEVへの転換が急速に進んでおり、それに伴う新たな製造ラインの構築や改良が進行中です。この動きは、工作機械業界においても関連する設備の需要を押し上げ、特に高精度な加工技術を提供する工作機械の需要が増加しています。
半導体業界の成長
半導体業界では、5GやIoT技術の普及に伴い、デジタル製品の需要が拡大しており、生産能力の強化が急務となっています。これにより、半導体製造用の工作機械への投資が増加し、業界全体での設備投資額も大幅に拡大しています。

人手不足と物価高への対応

多くの企業が抱える課題として、人手不足や物価上昇があります。特に、工作機械業界では熟練工の不足が深刻であり、労働力の確保が難しい状況が続いています。こうした背景から、企業は生産効率を高めるために自動化やデジタル化に積極的に投資しており、AIやロボティクスを活用した生産ラインの効率化が進んでいます。

さらに、物価高騰により設備コストが上昇しているものの、価格転嫁を行いながらも収益力を維持するための施策が各社で展開されています。特に、工作機械業界では高精度かつ高性能な機械を提供することで付加価値を高め、競争力を維持しています。

デジタル化と自動化の進展

デジタル化は、工作機械業界でも重要な課題となっています。2024年の設備投資計画では、DX（デジタルトランスフォーメーション）を進める企業が多く見られ、特に生成AIや自動化技術の導入が加速しています。工作機械業界では、これらの技術を活用することで、製造プロセスの効率化や品質の向上が図られており、従来の生産方法にとって代わる新しい技術が次々と登場しています。

デジタル技術の導入により、企業は生産ラインの管理やメンテナンスをより効率的に行えるようになり、製造現場の可視化やリアルタイムでのデータ分析が可能になっています。これにより、ダウンタイムの削減や稼働率の向上が実現され、長期的なコスト削減にも寄与しています。

脱炭素とカーボンニュートラルの取り組み

脱炭素社会の実現に向けた取り組みも、工作機械業界ではますます重要視されています。多くの企業が、カーボンニュートラルを目指した設備投資を進めており、特に省エネルギー化や環境に配慮した生産技術の導入が進んでいます。これにより、持続可能な生産活動を行いながらも、環境負荷を低減する取り組みが強化されています。

カーボンニュートラルに向けた技術革新は、コスト面での負担が大きいものの、長期的には企業の競争力を高め、顧客や投資家からの支持を得るための重要な要素となっています。

今後の展望と課題

2024年の工作機械業界は、成長が期待される一方で、人手不足や物価上昇といった課題にも直面しています。これらの課題に対応するためには、引き続きデジタル化や自動化を進め、効率的かつ柔軟な生産体制を構築することが求められます。

また、円安・円高といった為替の動向にも影響を受けるでしょう。2024年中期に入り、円高への転換が見られる場面もあります。円高は輸出産業にとっては逆風となり、企業の収益が圧迫される可能性があります。このため、輸出主導型の企業は今後の設備投資の計画に慎重な姿勢を示す可能性もあります。特に工作機械業界など輸出に依存する業種は、為替リスクをヘッジする必要が出てくるでしょう。

今後も、工作機械業界は技術革新を進めつつ、脱炭素や環境負荷の低減に取り組むことで、持続可能な成長を目指していくでしょう。企業がこの変化にどのように対応し、競争力を維持していくかが、今後の成長の鍵となります。