台湾工作機械業界の現状と今後

2024年6月20日

台湾の工作機械業界は、長い歴史と高度な技術力を誇り、世界の主要な工作機械輸出国の一つとして位置付けられています。2024年においても、業界の動向や課題、将来の展望に注目が集まっています。本記事では、台湾工作機械業界の現状と今後の見通しについて詳しく解説します。

参考：台湾の工作機械産業現状の概況
参考：【ワイズリサーチ】台湾工作機械産業の生産額および輸出状況 – ワイズコンサルティング＠台湾

生産と輸出の動向

台湾の工作機械産業は、堅実な成長を遂げてきました。2023年の生産額は33億1,000万米ドルに達し、2024年には33億7,000万米ドルと小幅な増加が予想されています。一方、輸出額は2023年に前年比14.0%減の25億9,944万米ドルとなりました。これにより、産業全体の成長は一定の制約を受けています。

企業規模と構造

台湾の工作機械メーカーは小規模な企業が多く、400人以上の従業員を抱える企業は全体のわずか1.8%に過ぎません。この分業構造は、一次下請け、二次下請けの部品メーカーが多く存在することに起因しています。

主要企業と製品

代表的な企業には力山工業、台中精機、金豊機器、永進機械、友嘉実業などがあり、それぞれが技術力と市場シェアを持っています。これらの企業は、主にマシニングセンタやNC旋盤などを製造し、電子部品生産による国内需要を背景に技術を蓄積しています。

市場と競争環境

台湾の工作機械は、新興国市場、特に中国や東南アジアに輸出されています。しかし、円安による日本製品との価格競争や、中国メーカーの低価格攻勢により、台湾メーカーの競争力が圧迫されています。TAMIの荘大立理事長は、台湾元のさらなる下落が必要であると指摘しています。

政府の支援と政策

2024年1月27日、台湾国際工具機展（TMTS）の開幕セレモニーに出席した陳建仁行政院長は、政府の取り組みを強調しました。台湾経済は地政学的、経済的な変化にもかかわらず成長を遂げ、世界で5番目の工作機械輸出国となりました。政府は、「スマート国家計画」を通じて革新的な技術の導入を支援し、工作機械産業の成長を促進しています。

課題と今後の展望

技術と研究開発

多くの台湾企業は研究開発部門を有しているものの、長期的な研究は少なく、短期的な売上目標に集中しています。今後は、工業技術研究院（ITRI）との連携を強化し、より高度な技術開発を推進することが求められます。

市場の多様化と新たな機会

陳伯佳理事長は、2024年の工作機械産業の業況について「23年とほぼ変わらない」との見通しを示しています。一方で、インド市場やベトナム、タイの自動車産業に新たなチャンスがあると述べています。これにより、台湾企業は新興市場への投資を強化し、グローバルなプレゼンスを拡大することが期待されます。

まとめ

台湾の工作機械業界は、分業体制が進んでおり、小規模な企業が多いことが特徴です。政府の支援や革新的な技術の導入により、産業全体の成長が期待される一方で、円安や中国メーカーの攻勢による厳しい競争環境に直面しています。今後は、研究開発の強化と市場の多様化を図り、グローバルな競争力を維持・向上させることが求められます。