2024年上半期は、国内外の経済環境の変化が影響を与え、製造業を含む多くの業種で倒産が増加する結果となりました。倒産件数の増加や負債総額の動向、さらには各業界の倒産主因を確認することで、下半期に向けた展望を考察していきます。
参考：倒産集計 2024年度上半期報（4月～9月）｜株式会社 帝国データバンク
2024年上半期の倒産動向
2024年上半期の倒産件数は、前年同期の4,208件から18.6％増加し、4,990件に達しました。これは、2013年度以来の高水準であり、特に製造業を含む全業種・全地域で前年を上回る倒産件数が報告されています。
一方で、負債総額は前年同期の1兆5,868億円から16.2％減少し、1兆3,294億円にとどまりました。この減少は、100億円以上の大型倒産が10件から3件に減少したことが要因とされています。
製造業においても、コロナ禍後の不透明な経済環境下での需要減少や、原材料価格の高騰、そして人手不足による影響が倒産を加速させました。「不況型倒産」の占める割合が高く、特に販売不振による倒産が顕著に増加しています。これらの傾向は、中小零細企業の経営にとって一層の厳しさを増しており、業歴10年未満の新興企業においても高い倒産件数が見られます。
業種別の倒産分析
製造業の上半期の倒産は599件と、2023年の954件、2022年の754件を超えるペースです。主な要因は、国や自治体による支援が打ち切り、物価高による材料コストの増加、人手不足などが挙げられます。
建設業においては「職別工事」の倒産が11年ぶりに400件を超えました。このように、労働力不足が倒産リスクを一層高めており、今後も人材確保の問題が継続する可能性があります。
特に注目すべきは「小売業」や「サービス業」に関連する分野です。サービス業全体では前年同期比28.4％増の1,312件となり、2000年度以降で最多の倒産件数を記録しました。さらに、飲食関連事業では仕入れ価格の高騰や物価上昇が経営を圧迫し、特に飲食店の倒産が過去最多ペースで発生しています。
地域別の倒産状況
地域別に見ると、関東や近畿地方での倒産件数が最も多く、全地域で前年を上回る倒産件数が報告されました。特に中国地方では、前年同期比39.7％増と急激な増加が見られ、リーマンショック以来の大幅な増加率を記録しています。製造業が集積する関東、近畿、中国地方における倒産の増加は、国内経済全体への影響も大きく、今後の対策が求められる状況です。
投資と企業の対応策
一方で、製造業における投資も一定水準で行われています。多くの企業は、自動化やデジタルトランスフォーメーション（DX）に向けた投資を強化し、競争力を維持するための施策を進めています。特にAIやロボティクス技術への投資が顕著であり、これにより労働力不足を補う動きが見られます。
下半期の展望と課題
2024年下半期においても、引き続き製造業にとって厳しい状況が続くことが予想されます。原材料価格の高止まりや、世界的なサプライチェーンの混乱、人材不足の問題は、依然として倒産リスクを高める要因となっています。
特に注目すべきは、コロナ禍後のゼロゼロ融資後倒産の増加です。2024年上半期だけで360件の「ゼロゼロ融資後倒産」が発生しており、下半期にもこの傾向が続くことが懸念されます。こうした企業への支援策や、再生可能な事業環境の整備が急務となるでしょう。
また、企業が生き残るためには、リスク管理の強化や新技術への対応が不可欠です。自社の強みを活かしつつ、コスト削減や新市場への進出など、柔軟な経営戦略が求められます。特にデジタル技術を活用した効率化や省人化の取り組みが、今後の製造業の成長を左右する要因となるでしょう。
まとめ
2024年上半期の製造業における倒産は、業界全体に大きな影響を与える結果となりましたが、同時に企業が今後の不確実性にどう対応するかが重要な局面を迎えています。下半期に向けては、デジタル化や海外展開を含む戦略的投資が、倒産リスクを減少させる鍵となるでしょう。
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