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前年同月比プラスも前月比マイナス、工作機械受注が示す日本経済の現状と課題

2024年10月の工作機械受注統計では、総額1,124億1,900万円と前年同月比では+9.3%と好調な伸びを示した一方、前月比では▲2.3%減少しました。

この統計は製造業や経済全体の動向を示す重要な指標であり、内外需の違いや、世界経済の潮流を読み解く鍵となります。

今回は、工作機械受注の現状をさらに深掘りし、日本経済や世界経済の視点から考察します。

参考:工作機械受注が教えてくれる世界経済と日本株(24 年10 月)|第一生命経済研究所

目次

国内需要の減少が示す課題

2024年10月の国内受注額は333億2,400万円で、前月比▲19.8%の減少を記録しました。これは、国内の設備投資の停滞を反映している可能性があります。一方で、前年同月比では▲1.0%と減少幅は縮小しており、下落のペースが緩やかです。

現在の国内需要減少には、経済全体の慎重な投資姿勢と円安の影響が考えられます。製造業では、海外需要の回復に比べて投資意欲が鈍化している可能性があるほか、円安によって輸入コストの増加が投資の抑制要因になっているかもしれません。

    一方で、国内で進行するサプライチェーンの再構築や、製造業の回帰(リショアリング)の動きが見られることから、これらが長期的には国内需要を押し上げる可能性があります。

    外需の増加がもたらす期待

    外需は890億9,500万円と前月比+6.3%、前年比+13.6%と上昇しました。これは中国景気の回復や北米市場の動き、アジア市場の成長が要因とされています。

    中国の景気刺激策が進行しており、製造業投資が堅調に推移していることが外需を押し上げています。特に、自動車やEV(電気自動車)の需要拡大が顕著です。

    米国では大統領選を控えた設備投資の動きが底堅く、工作機械需要が回復基調にあります。また、台湾などのIT関連産業を中心とした需要も外需を支えています。

      外需が全体を牽引する形となっている一方で、この成長が今後も続くかは、不透明な世界経済の影響を大きく受けることが予想されます。

      世界経済との連動性と今後の見通し

      工作機械受注は、グローバル製造業PMI(購買担当者指数)や半導体売上高と連動して動くとされており、これが日本の製造業や株式市場にも影響を及ぼします。

      グローバル製造業PMI(購買担当者指数)とは、製造業における経済活動の動向を示す指標です。企業の購買担当者を対象にした調査に基づいて算出され、特にグローバルな製造業の健康状態を把握します。景気の先行きを測るために広く活用されています。

      現在、グローバル製造業PMIは50を下回る水準ながら改善傾向にあります。地域別では、日本が50に近づき、台湾や中国は50以上を維持している一方で、韓国やユーロ圏では低迷が続いています。

      今後の回復には世界的な金利政策地政学的リスクと供給網再構築が重要になるでしょう。欧米の利下げや中国の景気対策が奏功すれば、設備投資が増加し、工作機械受注が上向く可能性があります。また、米中経済分断が進む中、日本国内やアジア市場でのサプライチェーン再編が新たな需要を生むことが期待されます。

      まとめ

      2024年10月の工作機械受注統計は、外需に支えられて前年比ではプラス成長を記録する一方で、国内需要の停滞が課題となっています。ただし、世界経済の改善や地政学的変化が引き続き日本の工作機械市場を押し上げる要因になると予想されます。

      当面は、国内の投資活動の復調や、外需の安定的な成長が求められます。日本国内の政策的な後押しが加わることで、受注額全体が再び上昇軌道に乗る可能性を秘めていると言えるでしょう。

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